建設業許可申請業務の流れ(手続の全体像)
【目次】
建設業許可申請は、行政書士の業務の中でも「要件確認」と「裏付け資料の収集」が成否の8割を握ると言われます。
令和7年12月12日施行の改正建設業法では、インフレの影響による金額基準の引き上げが行われましたが、手続きの厳格さ自体は緩和されていません。
むしろデジタル化の進展により、法令遵守の透明性はより強く求められるようになっています。
以下に、新人行政書士が受任から許可取得、その後の維持管理までをどのように導くべきか、その全体像を詳説します。
ヒアリングの前の準備
事前に揃えておくべきものが二つあります。
@ 申請先の都道府県の「建設業許可申請の手引き」
建設業許可申請業務のやり方は基本的に全国共通ですが、
細かい部分では各都道府県特有のルールがあります。
よって、それぞれの管轄の行政庁が作成している「手引き」は
必ず用意しておかなければいけません。
なお、手引書自体は購入するものですが、
ホームページからダウンロードできるところもあります(できないところもあります)ので、
各管轄の許可行政庁に問い合わせてください。
各都道府県の許可行政庁は、この一覧表で確認できます。
A 建設業許可申請業務を遂行するための書式
申請手続を完了する過程において、お客様から様々な情報を聞きとらなければいけません。
その際にどうしても必要となるのが、必要確認事項等が整理されている「チェックリスト」等の
書式です。
これがないと、必須事項の確認を落としてしまったり、誤った判断をする等の危険があります。
建設業許可申請の手続全体を十分に理解したうえで、
必要な書式を自分なりに作成しても構わないのですが、
現実的に考えて新人行政書士にそれは無理でしょう。
ですから、「書式を作成するなんてできません!」のページで紹介した書式集を購入されることを
奨励します。
その書式集の中で、「建設業許可申請業務」に使用するものは、主に以下の書式です。
- 建設業関連様式(計37種類のシート)
- 建設業許可要件チェックリスト
- 建設業許可申請準備書類チェックリスト
- 建設業 選任技術者の指定学科要件チェックリスト(一般建設業 )
- 建設業許可申請確認書類チェックリスト(大臣許可)
- 建設業許可申請業務の委任状
- 行政書士業務委任契約書
これらの書式を使うことにより、スムーズに業務を遂行することが可能となります。
初回ヒアリングと「許可の要否・区分」の特定
まずはクライアントの現状を正確に把握し、目指すべき許可の形を定めます。
現状の受注額と将来展望の確認
直近の受注状況を確認し、令和7年12月以降の新基準(特定許可が必要な下請代金額が建築一式8,000万円以上、その他5,000万円以上に引き上げ)に基づき、一般か特定かを判断します。
営業所の実態確認
大臣許可か知事許可かを決めるため、実際に「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」がどこにあるかを特定します。
業種の選定
29業種の中から、現在行っている工事と将来的に必要な業種を正しくマッチングさせます。
要件診断と「裏付け資料」の精査(最重要工程)
単に「要件を満たしている」という言葉を信じるのではなく、行政庁に提出できる「証拠」があるかを確認します。
経営能力と技術力の証跡
経営業務管理責任者や専任技術者としての経験を証明するため、過去5年分(または10年分)の請負契約書、注文書、請求書、さらにはそれに対応する入金通帳のコピーが「隙間なく」揃っているかをチェックします。
入金確認の落とし穴
請求書があっても、入金通帳等で実態が確認できない(現金決済で領収書がない等)場合、経験として認められないリスクがあるため、この段階で徹底的に洗います。
常勤性の確認
社会保険の標準報酬決定通知書や住民票などを用いて、営業所に常勤していることを証明できるか確認します。
書類作成と「申請パッケージ」の構築
収集した膨大な裏付け資料に基づき、法定の申請書類を作成します。
工事経歴書の整合性
申請する業種と工事経歴書に記載する内容が一致しているか、また税抜・税込の処理が適正かを精査します。
財務諸表の作成
建設業法上の勘定科目に沿って、決算書を書き換えます。
一般許可なら500万円以上の自己資本や資金調達能力、特定許可なら極めて厳格な財務4基準を満たしていることを数値で示します。
行政庁への申請と審査期間
準備した「申請パッケージ」を管轄の行政庁へ提出します。
申請手数料の納付
知事許可(新規)なら9万円、大臣許可(新規)なら15万円程度の登録免許税等が必要です。
標準処理期間
提出後、知事許可であれば概ね1ヶ月程度、大臣許可であれば3〜4ヶ月程度の審査期間を経て、許可の可否が判断されます。
補正対応
審査の過程で行政庁から追加の疎明資料を求められることがあります。
ここで迅速に対応できるかどうかが、プロとしての信頼に直結します。
許可取得後の継続的サポート(アフターフォロー)
「許可取得はゴールではなくスタート」です。
許可を取得した瞬間から、建設業者には新たな義務が発生します。
毎年の決算変更届
毎事業年度終了後4ヶ月以内に提出する義務があります。
5年ごとの更新
有効期間満了の前に更新手続きを行わなければ、許可は失効します。
法令遵守の指導
社会保険への加入維持や、現場への「金看板」の掲示、さらには令和7年改正で合理化されたICT活用による技術者配置の管理など、継続的なコンプライアンス支援が必要となります。
まとめ
令和7年現在、資材高騰により「軽微な工事」の範囲内で活動し続けることは困難になっています。
新人行政書士は、単に書類を揃える代行者ではなく、クライアントが「健全な財務基盤」と「適正な経営体制」を維持し、インフレ時代を生き抜くためのブレーンとして、このフローを管理する意識を持つことが重要です。
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