「特定建設業許可」と「一般建設業許可」の区別

「特定建設業許可」と「一般建設業許可」の区別

 

 

 

 

建設業許可申請の実務において、クライアントの今後の事業規模や受注戦略を決定づける最も重要な判断が、「一般建設業」「特定建設業」のどちらを選択するかという点です。

 

特に令和7年(2025年)2月1日施行の改正建設業法では、インフレ等の経済情勢を反映し、この区分を分ける金額基準が大幅に引き上げられました。

 

新人行政書士の先生が、単に「要件を満たしているから」と安易に特定許可を勧めるのではなく、5年後の更新リスクや管理コストまでを見据えた「経営コンサル」としてアドバイスできるよう、改正法に基づく最新の判断基準を詳説します。

 

「特定建設業許可」と「一般建設業許可」の区別(令和7年改正)

 

 

「特定建設業許可」と「一般建設業許可」の定義

 

 

特定建設業許可」(建設業法第15条以下)とは、発注者から直接建設工事を請け負う元請業者として、一件の建設工事について、そのすべての一次下請契約に係る下請代金の合計額が5,000万円以上となる下請契約を締結して施工しようとする者が受けなければならない許可をいいます。
ただし、建築工事業については、この金額基準が8,000万円以上とされています。
建設業法第3条第1項第2号、建設業法施行令第2条

 

 

「一般建設業許可」建設業法第5条以下)とは、特定建設業に該当しない建設業について必要となる許可をいいます。具体的には、次のいずれかに該当する者が受けなければならない許可です。

 

  • 元請として直接建設工事を請け負う場合であっても、一件の建設工事について一次下請に支払う下請代金の合計額が5,000万円未満である者(建築工事業の場合は8,000万円未満)。
  • 発注者から直接請け負う工事について、下請に工事を出さず、すべて自社で直営施工する者。
  • 下請として建設工事を請け負う者。

(建設業法第3条第1項第1号)

 

 

【軽微な建設工事について】

 

請負代金の額が税込500万円未満の工事(建築一式工事の場合は税込1,500万円未満)は、「軽微な建設工事」として区分されます。これらの工事のみを請け負う場合には、建設業許可は不要とされています。

 

 

【注記】

 

上記の金額はすべて消費税込みの額です。

 

金額は、下請業者1社ごとの契約金額ではなく、その工事1件について一次下請に発注した金額の合計額を指します。

 

下請代金の額には、元請負人が提供する材料等の価格は含まれません(建設業許可事務ガイドライン【第3条関係】等)。

 

上記の金額基準は、令和7年(2025年)2月1日の建設業法施行令改正により現行で有効なものです。改正前は、特定建設業許可の基準が3,000万円以上(建築工事業は4,500万円以上)でしたが、改正により引き上げられています。

 

 

ちょっと、わかりにくいですよね?以下でポイントをまとめていきます。

 

 

「一般」と「特定」を分ける法的本質:下請保護の視点

 

 

許可区分を決定する唯一の基準は、その業者が「発注者から直接請け負った(元請)1件の工事につき、合計いくらの金額を下請契約するか」という点にあります。

 

一般建設業許可:特定建設業許可を要しない規模の工事を行う場合です。

 

特定建設業許可:元請として受注した工事について、下請代金の総額が一定額以上となる契約を締結して施工する場合に必要となります。

 

この制度の趣旨は、多額の下請発注を伴う大規模工事において、下請負人の支払い能力を担保し、連鎖倒産等の不利益を防ぐことにあります。

 

重要なのは、この制限は「発注者から直接請け負った元請工事」のみに適用されるという点です。

 

二次下請、三次下請として孫請に発注する金額には、この区分の制限は適用されません。

 

 

令和7年2月1日以降の新基準:インフレ調整による金額引き上げ

 

 

近年の資材価格や労務費の著しい高騰を反映し、特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額(税込)が以下のように引き上げられました。

 

【建築一式工事】
・改正前基準額:7,000万円以上
改正後新基準額(令和7年2月1日〜):8,000万円以上
・改正のインサイト:マンション大規模修繕等の元請要件に影響

 

【その他の工事】
・改正前基準額:4,500万円以上
改正後新基準額(令和7年2月1日〜):5,000万円以上
・改正のインサイト:設備、土木、内装等のインフレ調整

 

この改正により、これまで「4,500万円」や「7,000万円」の壁ギリギリで工事を調整していた一般建設業者は、それぞれ500万円〜1,000万円分の余裕を得ることになります。

 

これは、資材価格上昇分を適正に価格転嫁しやすくし、中小建設業者の事業継続のハードルを下げる効果を持っています。

 

 

財産的基礎(財務要件)の決定的差異と「更新リスク」

 

 

特定建設業許可には、下請保護という重い責任に伴い、一般建設業とは比較にならないほど厳格な財務基準が課されます。

 

 

一般建設業の財産要件

 

直前の決算において「自己資本500万円以上」または「500万円以上の資金調達能力(残高証明書等)」のいずれかを満たせば足ります。

 

 

特定建設業の財産要件(4基準すべてを同時充足)

 

特定建設業の場合、直前の決算において以下の4つの基準すべてを満たしていなければなりません。

 

1. 資本金の額:2,000万円以上

 

2. 自己資本の額:4,000万円以上

 

3. 流動比率:75%以上

 

4. 欠損比率:20%以下

 

 

【新人行政書士が最も注意すべき実務ポイント】

 

一般建設業の場合、一度許可を得て継続して営業していれば更新時の財産要件確認は緩和されますが、特定建設業は「5年ごとの更新申請時」にもこれら4基準をすべて満たしている必要があります。

 

もし1つでも欠けていれば、特定許可は維持できず、一般許可への「般特新規(降格)」を余儀なくされます。

 

赤字決算が続いて財務体質が悪化しているクライアントに安易に特定を維持させるのは、5年後の爆弾を抱えさせることになりかねません。

 

 

技術者要件の高度化と「指定建設業」の特則

 

 

技術面でも、特定建設業には大規模工事を指導監督するに足りる高い能力が求められます。

 

一般建設業:2級施工管理技士、実務経験(10年等)での就任が可能です。

 

特定建設業:原則として1級国家資格者(1級施工管理技士、1級建築士、技術士等)の配置が必要です。

 

特に、国民生活への影響が甚大な指定建設業(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種)については、実務経験のみでの特定許可専任技術者就任は認められず、1級国家資格が必須となります。

 

 

行政書士としてのコンサルティング戦略

 

 

令和7年の法改正を受け、新人行政書士は以下の視点でクライアントを導くべきです。

 

 

(1)区分選択の最適化

 

基準額の引き上げにより、特定許可を維持するための増資や内部留保のコストと、一般許可に切り替えるメリットを比較考量する必要があります。

 

無理に特定を維持するより、健全な「一般」での経営を勧めるのも一つの戦略です。

 

 

(2)社会的信用と入札戦略

 

一方で、公共工事の入札(経営事項審査)では特定許可業者のほうが高い評価点を得やすい傾向にあります。

 

大規模案件や公共インフラへの参入を狙うなら、特定は強力なブランドとなります。

 

 

(3)施工体制台帳の管理義務

 

特定建設業者には、下請代金総額基準の引き上げに伴い、施工体制台帳の作成義務範囲も連動して変わる点など、事務負担の変化についても助言が必要です。

 

新人行政書士は、単に書類を揃える代行者ではなく、クライアントの財務諸表と5年先の受注計画を読み解き、「インフレ時代に耐えうる、最も持続可能な許可形態」を提案するプロフェッショナルとしての役割を果たすことが求められます。

 

 

その他の注意点

 

 

同一業種についての許可区分

 

 

同一の建設業について、「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の両方の許可を受けることは認められていません。建設業の許可は、一般と特定の別に区分して行われるものであり、同一業種に対する一般建設業許可と特定建設業許可を重複して取得することはできません。
建設業許可事務ガイドライン【第3条関係】1(2))

 

 

一括下請負の禁止

 

 

建設業法第22条により、一般建設業の許可を受けた建設業者か、特定建設業の許可を受けた建設業者かを問わず、建設業者が請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせることは禁止されています。
また、建設業の許可の有無を問わず、建設工事を一括して請け負う行為そのものも禁止されています。
建設業法第22条第1項・第2項)

 

 

民間工事における例外

 

 

ただし、民間工事であり、かつ建設業法施行令第6条の3で定める「共同住宅を新築する建設工事」に該当しない場合に限り、元請負人があらかじめ発注者から書面による承諾を得ているときは、一括下請負が例外的に認められることがあります。
建設業法第22条第3項、建設業法施行令第6条の3)

 

 

公共工事における禁止

 

 

一方で、公共工事については、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第14条により、建設業法第22条第3項の例外規定は適用されません。そのため、公共工事では一括下請負は全面的に禁止されています。
公共工事に該当する場合には、いかなる理由があっても建設工事を一括して他人に請け負わせることはできません。
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第14条

 

 

発注者の承諾を得た場合の注意事項

 

 

民間工事において発注者の書面による承諾を得た場合であっても、元請負人は次の点に注意する必要があります。

 

承諾は、一括下請負に付する以前に、発注者(建設工事の最初の注文者)から書面により受けなければなりません。

 

承諾を受けなければならない者は、建設工事を一括して他人に請け負わせようとする元請負人自身でなければなりません。

 

発注者の承諾を得た場合であっても、元請負人は請け負った建設工事について建設業法に基づく責任を果たす必要があり、当該工事現場に主任技術者または監理技術者を配置することが必須となります。

 

 

実務上の重要ポイント

 

これらの規制は、発注者が建設業者に寄せた信頼を守ること、中間搾取の防止、工事の品質確保、労働条件の維持、そして建設業の健全な発展を目的としています。
相談者に対して建設業許可や工事契約について説明や助言を行う際には、一括下請負禁止の制度趣旨と具体的な規制内容を正確に伝えることが重要です。

 

 

まとめ

 

 

令和7年の改正法により、特定建設業許可の下請代金基準が建築一式工事8,000万円以上、その他の工事5,000万円以上に引き上げられました。

 

特定許可には厳格な財務要件(資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上等)と1級国家資格者の配置が求められ、5年ごとの更新時にも継続的な充足が必要です。

 

行政書士は、クライアントの財務状況と将来計画を分析し、「一般」と「特定」の戦略的選択を助言することで、真の経営パートナーとしての価値を発揮できます。

 

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