行政書士会の事務所調査をナメてはいけません!

行政書士会の事務所調査をナメてはいけません!


【目次】

 

開業前の事務所調査とは?

 

 

行政書士会に登録申請書類を提出すると
その次の手続として「事務所調査」が行われます。
あなたの開業前の事務所にチェックが入るのです。

 

 

支部毎に異なりますが、
だいたい申請から1カ月以内に行われるようです。
(実施しない支部もあるそうです。入会予定の支部会に確認してください)

 

 

調査に来られるのは
開業後にあなたが所属することになる支部の役員です。

 

 

私の場合は、支部長と副支部長の2名が来られました。
事前に、何人来られるのかを聞いていたので、
2名分の椅子とお茶菓子を用意しておきました。

 

 

開業当初は自宅を事務所にする方も多いでしょう(私もそうでした)。
用意している椅子の数にも限りがあります。
もし、調査に来られた役員の人数分の椅子が足りない、なんてことになったら最悪です。
椅子がない先生は、事務所調査の間ずっと立っていなければいけません。

 

それが原因で登録拒否、ということはないでしょうが、
入会後もお付き合いさせていただく大切な先輩行政書士です。
その方を通じて人脈が広がる可能性もあります。
失礼のないように、椅子やお茶を用意しておくことは当たり前のことです。

 

わざわざ、営業時間を潰してまで調査に来ていただくのですから、
気分良く時間を過ごして頂けるように最大限の配慮をしましょう。

 

 

上手くいけば、単なる調査だけでなく、
貴重なアドバイスを頂けるかもしれません。

 

 

私の場合も、アドバイスを頂きました。
ただし、それは私から質問をいくつか投げかけたから、です。
そして、その前提として調査員の先生方の笑顔が見られたから、です。

 

 

調査に来られる先生方も人間≠ナす。
初対面の新人に対して感情を抱くはずです。
つまり、「好き」か「嫌い」(どうでも良い、を含む)か、です。

 

提出された申請書類だけを審査する場合とは違うのです。
事務所調査をするときには、調査員は「人」と接するのです。
人と接する時には、必ずその人に対する感情が湧くのです。
そして、嫌いな人間に対して積極的にアドバイスをするなどありません。
ですから、できるだけ好印象を与えて、気持ち良く会話をしてもらえるように心がけましょう。
そして、良い雰囲気を作れたなと感じたら質問をしてみる、というのが良いでしょう。

 

なお、当然のことですが、質問内容は事前に整理しておきます。
思いつくままにダラダラと質問をしたら嫌われます。

 

 

事務所調査の内容・目的と対策

 

 

では次に、調査内容についてお話します。

 

 

調査の内容も、支部毎によって若干の違いはあるようですが、
基本的には以下の点がチェックされるようです。

 

 

形式的な調査

 

 

まず、形式的な調査として、
提出した申請書類の記載に誤りがないかを確認されます。
行政書士会に提出した申請書類のコピーを調査員が持ってきて
口頭での確認作業をするのです。

 

もし誤りが見つかったりしたら、登録が遅れてしまうので、
書類提出の際に、入念に誤りがないかをチェックしておいてください。
また、悪質な虚偽記載が後から発見されると、登録が取り消されることになります。
まぁ、そんな事をする人はいないでしょうけど。

 

 

実質的な調査

 

 

さらに、実質的な調査として
以下の2点のチェックがなされるようです。

 

 

@ 守秘義務が保てる事務所か?

 

A 行政書士の職務を遂行できる事務所か?

 

です。

 

 

以下、順番に説明していきましょう。

 

 

@ 守秘義務について

 

 

行政書士には依頼者の秘密を漏らしてはならないという法律上の義務があります。
行政書士法12条、22条)

 

 

なので、依頼者と打ち合わせをすることになる事務所も、
守秘義務を守ることができる環境でなければいけません。

 

 

要するに、依頼者の相談内容が他人に聞かれないような環境でなければならないのです。

 

 

といっても、それほど厳格な審査ではありません。
例えば、自宅の一室であっても、
四方を壁に囲まれた一室であれば、事務所として認められます。

 

 

居住部分と事務所部分が明確に区別されていれば良いのです。

 

 

厳密に言えば、
自宅の一室だと同居している家族の耳に相談内容が聞こえる可能性はありますが、
それは許容範囲内です。

 

 

とにかく形式上¢シの空間から遮られた独立した部屋であればOKです。
簡単に言えば、2階の子供部屋のような事務所でも良いということです。

 

 

ただし、鍵のかかるキャビネット(引き出し)は用意すべきです。

 

 

調査を行う支部によって、聞いたり聞かなかったりするようですが
「顧客の個人情報などが記載された重要な書類を保管する場所がありますか?」
と尋ねられることがあります。

 

要するに、「金庫や鍵付きキャビネットがあるか?」ということです。

 

そして、そういった設備がなければ、それはマズい、ということになります。
重要書類や預かり金を他人が簡単に持っていく事が出来る状況ですからね。
また悪用されやすい「職務上請求書」も、他人が持っていったら大変なことになります。

 

 

仮に、調査の時にその点をスルーしてもらったとしても、
その後、開業した後に顧客情報を厳重に管理することは
行政書士として当然必要になってきます。

 

もし、事務所に窃盗が入り、重要書類などが盗まれたりしたら、
あなたが顧客に対して責任を負うことになります。
多額の損害賠償責任を負う可能性もあります。
業界内で信用を失えば、廃業への道まっしぐらです。

 

 

ですから、必ず、鍵付きキャビネットは用意しておいてください。
なお、金庫(持ち運べない重さのもの)は高額なので、収入が増えてからでも良いと思います。

 

参照→「行政書士事務所に鍵付きキャビネットがない?

 

 

なお、最近増えている「コワーキングスペース」はダメですね。
オープンスペースをパーティションで区切って共有しているだけであり「個室」とはいえないからです。

 

 

A 行政書士の職務を遂行できる事務所か?

 

 

いくら独立した空間であったとしても、
机や本棚もないような事務所だったとしたらどうでしょうか?

 

「これで本当に行政書士の業務ができるのか?」

 

と不安にさせてしまいますよね。

 

 

さすがに、机もない状況で登録申請をする人はいないと思いますが、
準備が不十分な状況で、事務所調査の日を迎える人は少なくないようです。

 

例えば、電話やFAX等の準備が出来ていない段階で事務所調査があっても
「いま準備中ですので・・・」と言えば、まあ登録は認められるようです。
ですが、やっぱり調査に来て下さった役員への印象は良くないはずです。

 

また、専門書類が揃っていないのは構わないのですが、
1冊もない、というのはやっぱりおかしいです。
「こんな人の登録を認めても、責任ある仕事はできないよね?」
となるはずです。
特に、きちんとした「六法」が置いてあるかを見る調査員はいるそうです。
ないからといって、登録が認められないわけではないそうですが、
印象が悪いのです。

 

 

行政書士の仕事は、とりわけ段取り≠ェ重要な仕事です。
事前準備もきちんと出来ていない新人を、誰かに紹介しようと思うでしょうか?
親身になってアドバイスをしてあげようと思うでしょうか?

 

 

既に言いましたが、「事務所調査」は
調査をする役員にとっては単なる「調査」ですが、
調査を受ける開業前行政書士にとっては、
その役員との「人脈」を作る絶好のチャンスなのです。

 

 

ただの先輩行政書士ではないのです。
あなたの営業エリアの支部の役員なのです。
相当の人脈をもっている方なのです。
そんな方が、あなたの開業前の事務所に来て、あなたに会ってくれるのです。

 

 

 

「事務所調査をナメてはいけません」という記事タイトルの意味は
もうわかってもらえたと思います。
行政書士業務を遂行するために最低限必要な環境は
事務所調査の日までに整えておきましょう。

 

 

 

まとめ

 

 

「事務所調査」の内容・目的

 

形式面として、申請書類の記載に誤りがないか
実質面として@守秘義務を保てる環境か、A業務を遂行できる環境か
を調査する。

 

 

対策

 

自宅事務所であっても、居住部分と独立した部屋であればOK
ただし、鍵付きキャビネットは用意すべき

 

 

「事務所調査」は「人脈作り」の絶好のチャンス。
調査に来られた先生に失礼がないように、
そして、登録を認めてもちゃんと業務を遂行できるという信頼を得られるよう、
事前準備には万全を期しましょう。

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