「新規の許可」「許可の更新」「業種の追加許可」の区別

「新規の許可」「許可の更新」「業種の追加許可」の区別

 

 

 

建設業許可申請の実務において、クライアントの現状を正確に把握し、どの「申請区分」を選択するかを判断することは、行政書士の基本中の基本です。

 

令和7年(2025年)2月1日の改正法施行により、特定建設業の金額基準が引き上げられたことで、特に「一般」と「特定」を切り替える際の判断は、かつてないほど戦略的なものとなっています。

 

本記事では、実務上混同しやすい申請区分の違いと、行政書士がコンサルティングにおいて意識すべき「許可の最適化」について詳説します。

 

 

許可の申請区分について

 

 

新規の許可」とは:現在、有効な建設業許可を受けていない個人又は法人が受ける許可です。

 

許可の更新」とは:現在、有効な建設業許可を受けている個人又は法人が、5年の有効期間満了日以前の30日前までに受ける許可です。

 

業種の追加許可」とは:現在、建設業のある業種で許可を受けている個人又は法人が別の業種について受ける許可です。

 

以下、それぞれの許可について詳しく解説していきます。

 

 

「新規」の許可:三つの異なるシナリオ

 

 

新人行政書士が間違いやすいのは、「新規」という言葉が単に「初めて許可を取る場合」だけを指すのではないという点です。

 

実務上、新規申請には以下の3つのパターンが存在し、それぞれ審査の重みや手数料が異なります。

 

 

@ 普通新規(全く新たに許可を受ける場合)

 

 

現在、29業種のいずれについても許可を持っていない事業者が、初めて許可を申請する場合です。
全ての要件を一から審査するため、最も多くの疎明資料を必要とします。

 

 

A 許可換え新規(管轄行政庁が変わる場合)

 

 

知事許可業者が他の都道府県に営業所を新設して「大臣許可」になる場合や、大臣許可業者が営業所を一県に集約して「知事許可」になる場合です。

 

実務上の注意
大臣許可への切り替えは審査に3〜4ヶ月を要するため、大規模案件の入札時期を考慮したスケジュール管理が不可欠です。

 

 

B 般特新規(一般と特定を切り替える場合)

 

 

既に「一般」の許可を持っている業種について、「特定」の許可を申請する場合(またはその逆)です。

 

例えば、
α業で「一般」の許可を受けている個人又は法人が、新たにβ業で「特定」の許可を受けたい場合、
α業で「特定」の許可を受けている個人又は法人が、新たにβ業で「一般」の許可を受けたい場合、
などです。

 

 

令和7年改正の影響
特定許可の下請代金基準額が引き上げられた(建築一式:8,000万円以上、その他:5,000万円以上)ため、財務維持コストを考慮して特定から一般へ「降格」させる般特新規のニーズが高まっています。

 

 

「個人事業主」から「法人」化した場合

 

 

個人で建設業を営んでいた者が法人化する場合、
「個人」で受けた許可は引き継がれません。

 

つまり、「法人」として
全ての許可を「新規の許可」として受けなければならないことになります。

 

しっかり覚えておいてください。
相談者から聞かれることも当然あります。

 

 

「許可の更新」:5年ごとのライセンス維持

 

 

期限について

 

 

建設業許可の有効期間は5年間であり、満了後も営業を継続するには更新手続きが必須です(建設業法第3条第3項)。

 

更新のタイムリミットは、期間満了の日の3ヶ月前から30日前(自治体により異なる)までに申請を行う必要があります(建設業法施行規則第5条)。

 

更新しなければ、許可の効力は失効します。

 

なお、許可の有効期間の末日が行政庁の休日(土曜、日曜、祝日等)であっても、同様の取扱いとなります。

 

*「建設業許可事務ガイドライン」に定められています。このガイドラインは重要なので、必ず目を通しておいてください。

 

 

前提条件(決算変更届)
毎年の「決算変更届(事業年度終了届)」が5年分すべて提出されていないと、更新申請は受理されません。

 

特定建設業の更新リスクについても注意が必要です。

 

特定許可は更新時にも「財務4基準(自己資本4,000万円以上等)」をすべて満たしている必要があります。

 

もし一つでも満たせなければ、更新できずに一般許可への切り替え(般特新規)を余儀なくされます。

 

 

実務上の注意点

 

 

なお、更新の相談を受けた場合には、必ず許可の有効期限を確認してください。
「許可通知書」に記載されています。

 

 

また、新規許可の仕事を完了した顧客の有効期限が近づいてきたら、
こちらから(行政書士の方から)知らせてあげましょう。

 

当然ですよね?
こちらから行動を起こさないと、リピーターにはなってもらえません
すぐにライバルに取られてしまいますよ。

 

そして、「お知らせ」を欠かさないように、
顧客リストは日頃からきちんと整理しておきましょう。

 

 

「業種の追加」:事業拡大への対応

 

 

既に何らかの建設業許可を保持している事業者が、未取得の業種を追加する場合です。

 

例えば、以下のようなケースが該当します。

 

・「一般建設業」で電気工事業の許可を受けている個人または法人が、さらに「一般建設業」で管工事業の許可を受けたい場合

 

・「特定建設業」でガラス工事業の許可を受けている法人が、さらに「特定建設業」で塗装工事業の許可を受けたい場合

 

 

追加しようとする業種について、新たに「専任技術者(センギ)」の要件を満たす人員を配置できるかが審査の核心となります。

 

 

注意点
一般許可を持っている業者が、別の業種を「特定」で取得したい場合は、業種追加ではなく「般特新規」となります。
この区別を誤ると申請が受理されません。

 

 

申請区分別の比較表

 

 

知事許可の標準例を以下の表にまとめました。

 

新規(普通・許可換え・般特)
主な要件確認:6大要件すべてを厳格に審査
手数料(目安):9万円前後
審査期間:1ヶ月〜

 

更新
主な要件確認:欠格要件、社会保険、特定なら財務4基準
手数料(目安):5万円前後
審査期間:1ヶ月程度

 

業種追加
主な要件確認:新業種の専任技術者要件
手数料(目安):5万円前後
審査期間:1ヶ月程度

 

 

行政書士としてのプロの視点:許可の「一本化」と戦略的助言

 

 

新人行政書士は、単に依頼された手続きをこなすだけでなく、クライアントの事務負担を軽減する「許可の最適化」を提案すべきです。

 

 

許可の有効期間の調整(一本化)

 

 

複数の業種の許可を異なる時期に取得していると、満了日がバラバラになり、数年おきに更新費用と手間が発生します。

 

解決策
更新や業種追加のタイミングで、他の業種の有効期間も同時に更新し、満了日を揃える「一本化」を提案してください。
これにより、次回の更新からは一度の手続きで済むようになります。

 

 

令和7年改正を逆手に取った提案

 

 

インフレによる資材高騰で、かつては特定許可が必要だった規模の工事が、改正により一般許可でも対応可能(下請発注5,000万円/8,000万円未満)になりました。

 

コンサルティング
特定許可の厳しい財務基準を維持するために増資や内部留保に苦心しているクライアントには、改正を機に「一般」へ一本化し、経営の柔軟性を確保する戦略を提示することも、行政書士の重要な介在価値です。

 

新人行政書士は、クライアントの「許可票(金看板)」の有効期限を常にチェックし、法改正の波を乗り越えるための「最適な許可のポートフォリオ」を構築するパートナーとなるべきです。

 

 

まとめ

 

 

建設業許可の申請区分には「新規」「更新」「業種追加」があり、それぞれ審査のポイントや手数料が異なります。

 

特に「新規」には普通新規、許可換え新規、般特新規の3つのパターンがあることを理解しておきましょう。

 

令和7年改正による金額基準の引き上げを踏まえ、クライアントに最適な許可の組み合わせを提案できる行政書士を目指してください。

 

許可の一本化や般特の切り替えなど、戦略的な助言こそが行政書士の真の価値となります。

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