「国土交通大臣許可」と「知事許可」(許可区分)
【目次】
建設業許可申請のコンサルティングにおいて、最初期に確定させるべき事項が「許可区分(管轄)」です。
新人行政書士の先生がクライアントから「隣の県で工事を請け負うことになったから、大臣許可が必要だよね?」と聞かれた際、即座にその誤解を解き、適切なアドバイスができるかどうかがプロとしての信頼に直結します。
本記事では、令和7年12月12日施行の改正法下における「大臣許可」と「知事許可」の厳密な定義と、実務上の判断基準を徹底的に深掘りします。
「大臣許可」と「知事許可」の定義
まずは、「国土交通大臣許可」と「知事許可」の法令上の定義から確認しましょう。
建設業法第3条第1項に定められています。
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
簡単にまとめましょう。
「国土交通大臣許可」とは、二つ以上の都道府県の区域内に営業所を設置するときに受けなければいけない許可です。
「知事許可」とは、一つの都道府県の区域内にのみ営業所を設置するときに受けなければいけない許可です。
つまり、営業所が一か所だけであれば、「知事許可」を受ければ良いことになります。また、営業所を複数設置する場合でも、すべて同一都道府県内であれば、同様に「知事許可」を受ければ良いということになります。
要するに、「国土交通大臣許可」が必要となるのは、本店のほかに複数の支店を他の都道府県に設けるような、比較的大規模な建設業者ということになります。
個人の、しかも新人の行政書士事務所に、こうした大規模な建設業者が仕事を依頼するということはまず考えられません。そのため、新人の皆さんは、まずは「知事許可」を念頭に置いて勉強すると良いでしょう。
「営業所」の法的定義を再確認する
管轄を決定する唯一の基準は、施工現場の場所ではなく、「営業所」がどの都道府県に所在するかです。
そして、「営業所」とは、本店、支店、もしくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます(建設業法施行令第1条)。
具体的には次の四つの要素が備わっている場所を指します。
@ 請負契約の見積もり、入札、契約締結などの実態的な業務を行っていること。
A 電話や机、各種事務台帳を備え、居住部分や他法人、または他の個人事業主とは、間仕切りなどによって明確に区分された事務室が設けられていること。なお、ICT環境が整備されており、営業所での職務と同等の職務を遂行でき、常時連絡が取れる状況にある場合には、テレワークも認められます。
B 常勤役員等、すなわち建設業法第7条第1号に規定される「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」、または建設業法施行令第3条に規定する使用人が常勤していること。
C 営業所技術者(旧称である専任技術者)が常勤していること。
大まかに言えば、「きちんと契約を締結するための場所」とイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。
そのため、単なる作業所や工事事務所、資材置場などは「営業所」には該当しません。これらを他府県に設置したとしても、「国土交通大臣許可」が必要になるわけではありません。
ざっくりポイントをまとめれば以下のようになります。
営業所の要件
1. 請負契約の締結:常時、建設工事の請負契約を締結する実態があること
2. 実体的な設備:電話、机、什器備品を備え、外部から建設業の営業所であることが明確に判別できる(看板の掲示等)こと
3. 責任者の常駐:経営業務の管理責任者(または令3条の使用人)や専任技術者が常勤していること
【実務上の注意:営業所とみなされない例】
・単なる資材置き場、駐車場、作業員詰所
・事務連絡のみを行い、契約締結権限を持たない「連絡所」や「出張所」
・特定の工事期間中のみ設置される「現場事務所」
知事許可と大臣許可の峻別基準
許可行政庁の区分は、営業所の所在地によって以下のように決定されます。
@ 都道府県知事許可
一つの都道府県内のみに営業所を設けて営業する場合です。
例:東京都内に本店があり、同じく東京都内にのみ支店がある場合。
例:営業所が本店一つのみ(東京都)の場合。
A 国土交通大臣許可
二以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合です。
例:東京都に本店があり、神奈川県に契約締結権限を持つ支店を置く場合。
都道府県知事許可と国土交通大臣許可の比較
営業所の配置
知事許可:一つの都道府県内のみ
大臣許可:二以上の都道府県にまたがる
申請先
知事許可:各都道府県知事
大臣許可:主たる営業所を管轄する地方整備局等
新規手数料
知事許可:9万円(概ね)
大臣許可:15万円(登録免許税)
審査期間
知事許可:概ね1ヶ月前後
大臣許可:概ね3〜4ヶ月
最大の誤解:「施工現場」と「管轄」は無関係
新人行政書士がクライアントに最も強調すべきインサイトは、「営業所の所在地と施工現場の場所は無関係である」という事実です。
知事許可でも全国施工が可能
東京都知事許可の業者であっても、神奈川、千葉、大阪、あるいは北海道の現場で施工を行うことに何ら法的制限はありません。
大臣許可が必要なケース
あくまで「他県に営業拠点を設けて、そこで直接契約を結びたい」場合にのみ大臣許可への切り替えを検討します。
したがって、地方の建設業者が「東京の公共工事を直接受注したい」と考えたとしても、拠点を増やさない限りは知事許可のままで十分対応可能です。
許可換え新規(管轄の変更)の実務
事業拡大や拠点の統廃合によって管轄が変わる際の手続きを「許可換え新規」と呼びます。
知事許可 → 大臣許可:隣接県に新しく営業所を開設し、そこで契約締結を行う場合
大臣許可 → 知事許可:拠点を一つの県に集約し、他県の営業所を廃止または連絡所に降格させる場合
【許可換え時の空白期間リスク】
許可換え申請中は、旧許可が有効期限を過ぎても、新許可が下りる(または不許可になる)までは有効とみなされます。
しかし、大臣許可への切り替えは審査期間が長いため(3〜4ヶ月)、大規模案件の入札時期等と重ならないよう、余裕を持ったスケジュール管理をアドバイスすることが重要です。
行政書士としてのプロの視点
新人行政書士の先生は、ヒアリングの際に以下の3点を徹底して確認してください。
1. 支店の「実態」
クライアントが「支店」と呼んでいる場所が、法上の「営業所(契約締結場所)」に該当するか。
2. 専任技術者の二重配置
大臣許可にする場合、それぞれの県にある営業所に別々の専任技術者を配置しなければなりません。
人材の確保ができているかを確認します。
3. コストと手間の天秤
大臣許可は「全国展開している」という対外的な信用力に繋がる側面もありますが、手数料や審査期間、届出書類の煩雑さも増します。
クライアントの事業戦略にとって本当に大臣許可が必要か、冷徹に分析して提案すべきです。
令和7年の現在、行政のデジタル化が進み、虚偽の「支店」登記による大臣許可取得は、実態調査によって厳しく摘発されるリスクが高まっています。
法令に基づいた正しい「営業所」の認定が、プロとしての第一歩となります。
まとめ
建設業許可の管轄は、施工現場ではなく営業所の所在地で決まります。
一つの都道府県内のみに営業所がある場合は「知事許可」、二以上の都道府県に営業所がある場合は「大臣許可」となります。
知事許可であっても全国で施工可能であり、他県に契約締結拠点を設ける場合のみ大臣許可への切り替えを検討します。
営業所の実態、専任技術者の配置、コストと手間を総合的に判断し、クライアントに最適な許可区分をアドバイスすることが行政書士の重要な役割です。
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