E建設業許可の欠格要件【要注意!納入した申請手数料は返ってきません!】

E建設業許可の欠格要件【要注意!納入した申請手数料は返ってきません!】

 

 

 

 

 

 

続きまして、「欠格要件に該当しないこと」(建設業法第8条、同法第17条)
について説明していきます。

 

 

建設業許可申請において、行政書士が最も神経を研ぎ澄まさなければならないのが、この「欠格要件」の確認です。

 

他の要件(経営管理能力や技術者など)をどれほど完璧に揃えても、欠格要件に一つでも該当すれば、許可は100%下りません。

 

さらに恐ろしいのは、審査の結果「不許可」となった場合、納入した申請手数料(知事許可:約9万円、大臣許可:15万円)は一切返還されないという点です。

 

これはクライアントにとって重大な金銭的損失であり、確認を怠った行政書士の責任問題に発展しかねません。

 

本記事では、絶対に踏んではならない「地雷原」の詳細と、実務上のヒアリング術を詳説します。

 

 

 

では、まずは条文を見てみましょう。

 

第八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。

一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 第二十九条第一項第七号又は第八号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者
三 第二十九条第一項第七号又は第八号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条の規定による通知があつた日から当該処分があつた日又は処分をしないことの決定があつた日までの間に第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から五年を経過しないもの
四 前号に規定する期間内に第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出があつた場合において、前号の通知の日前六十日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは政令で定める使用人であつた者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であつた者で、当該届出の日から五年を経過しないもの
五 第二十八条第三項又は第五項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
六 許可を受けようとする建設業について第二十九条の四の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
七 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
八 この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
九 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(第十四号において「暴力団員等」という。)
十 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
十一 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに第一号から第四号まで又は第六号から前号までのいずれかに該当する者のあるものに係る部分に限る。)のいずれかに該当するもの
十二 法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第十号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第二十九条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第二十九条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
十三 個人で政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第十号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第二十九条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第二十九条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
十四 暴力団員等がその事業活動を支配する者

 

(準用規定)

第十七条 第五条、第六条及び第八条から第十四条までの規定は、特定建設業の許可及び特定建設業の許可を受けた者(以下「特定建設業者」という。)について準用する。この場合において、第五条第五号中「第七条第二号イ、ロ又はハ」とあるのは「第十五条第二号イ、ロ又はハ」と、第六条第一項第五号中「次条第一号及び第二号」とあるのは「第七条第一号及び第十五条第二号」と、第十一条第四項中「第七条第二号イ、ロ又はハ」とあるのは「第十五条第二号イ、ロ又はハ」と、「同号ハ」とあるのは「同号イ、ロ若しくはハ」と、同条第五項中「第七条第一号若しくは第二号」とあるのは「第七条第一号若しくは第十五条第二号」と読み替えるものとする。

 

 

 

うんざり・・・・・・(;´Д`)

 

 

ですよね。

 

 

まとめましょう!

 

 

 

 

建設業許可の欠格要件は、大きく分けて

 

1 許可を受けようとする者の欠格事由と
2 提出書類の欠格事由

 

があります。

 

 

以下、それぞれの場合に分けて説明していきます。

 

 

 

許可を受けようとする者の欠格事由

 

 

まず、「許可を受けようとする者」(建設業法第8条)とは、
以下の者達です。

 

 

個人の場合→その本人支配人

 

法人の場合→その法人役員支店又は営業所の代表者

 

なお、建設業補施工規則第7条1号ロの「直接補佐者」は、その者の役職が「役員等」に該当しない限り、欠格要件判断の対象者には含まれません

 

 

そして、これらの者が、以下のア〜キのいずれかに該当する場合には
建設業許可を受けられないことになります。

 

 

ア 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(建設業法第8条第1号)

 

 

イ 不正の手段により許可を受けて許可行政庁からその許可を取り消され、
  又は営業停止処分に違反して許可を取り消され、
  その取消の日から5年を経過しない者(同第2号)

 

 

ウ 許可の取消を免れるために廃業の届出をしてから
  5年を経過しない者(同第3号、4号)

 

 

エ 建設業法に違反して許可行政庁から営業の停止を命ぜられ、
  その停止の期間が経過しない者(同第5号)

 

オ 許可を受けようとする建設業について営業を禁止され、
  その禁止の期間が経過しないもの(同第12号、13号、6号)

 

 

カ 禁固以上の刑に処せられた場合で、
  刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から
  5年を経過しない者(同第12号、13号、7号)

 

 

キ 以下の法律違反行為で罰金刑を受けて5年を経過しない者(同第12号、13号、8号)

 

・建設業法

 

・建築基準法
  施工停止命令違反(9条1項)
  除去等の命令違反(10条前段)
  現場の危険防止違反(88条1〜3項、90条3項)

 

・宅地造成法等規制法
  監督処分違反(14条2〜3項)

 

・都市計画法
  監督処分違反(81条1項)

 

・労働基準法
  強制労働(5条)

 

・職業安定法
  労働者供給事業の禁止違反(44条)

 

・労働者派遣法
  禁止の派遣業務(4条1項)

 

・暴力団員による不当な行為の防止に関する法律

 

・刑法
  傷害罪(204条)
  現場助勢(206条)
  暴行(208条)
  凶器準備集合(208条の3)
  脅迫(222条)
  背任(247条)

 

・暴力行為等処罰に関する法律

 

 

ク 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員、又は
  同号に規定する暴力団員で亡くなった日から5年を経過しないもの(同第12号、13号、9号)

 

 

ケ 暴力団員等が、その事業活動を支配する者(同第14号)

 

 

コ 心身の故障により建設業を適切に営むことができないもの(同第10号、12号、13号、
  規則8条の2)

 

 

サ 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者で
  その法定代理人が上記の要件に該当する場合(同第11号)

 

 

 

これら欠格事由の全てに該当しないことを確認する必要があります。

 

書式を作成するなんてできません!」で紹介した書式集内の「建設業許可要件チェックリスト」に要確認事項がまとめられていますので、このシートを使いながらお客様と確認していきましょう。

 

 

 

提出書類の欠格事由

 

 

1 許可申請書又はその添付書類の中に重要な事項について虚偽の事実があるとき

 

2 許可申請書又はその添付書類の中に重要な事実の記載が欠けているとき

 

 

1に関しては申請者のミス(あるいは故意)ですが、
2に該当した場合は行政書士に責任があります。

 

決してミスしないように、慎重に書類を作成しましょう。

 

 

 

欠格事由に関する注意点

 

 

1 申請手数料は返ってきません!!

 

 

建設業許可の申請書提出の際、申請手数料を納入することになります。
一旦納入した手数料は返還されません

 

 

そして、欠格事由の判断は申請書を提出した後(手数料を納入した後)になされます。

 

 

ということは、
欠格事由の存在が判明し、建設業許可が受けられないことになったとしても、

もはや納入した申請手数料は返ってはこないのです。

 

 

 

これはちょっとマズいです。
依頼者の方に非があったとしても、依頼者はやっぱり納得いきません。
トラブルになりやすいです。
支払った報酬だけでなく、手数料も行政書士に賠償請求してくるケースもあります。

 

このような事態にならないように、欠格事由に関しても慎重に判断するよう心がけてください。

 

また、そもそもそれ以前に依頼者と業務委託契約を締結する際に、
上記の様なケースでも報酬や手数料の返還はしない旨を
契約書」に明記して合意しておかなければいけません。
書式集の中の「行政書士業務委任契約書」を使って契約しておけば大丈夫です。

 

 

 

2 役員の犯罪歴に注意!!

 

 

上記した欠格事由の中でも特に注意しなければならないのが、
暴行罪、傷害罪等の刑法違反、つまり犯罪歴です。

 

 

建設業に携わる人に限った話ではありませんが、人によっては気性が荒いタイプもいます。
喧嘩をして他人に大けがを負わせたという過去がある人は、以外に多いものです。
つまり、建設業法第8条第7号、第8号の欠格事由に該当する人は、案外いるのです。

 

 

特に問題となりやすいのが「法人」の場合です。

 

既に述べたように「法人」申請の場合、
代表取締役(社長)のみならず、全ての「役員」に欠格事由があってはいけません。

 

しかし、役員に犯罪歴があっても、社長はそのことを知らないケースもあります。
(建設業界の会社に限った話ではありませんが、そういうことも珍しくないのです)

 

 

ですから、申請手続に入る前に、社長に
「役員の中に犯罪歴等の欠格事由に該当する者がいないかを改めて確認してください」
と、きちんと伝えておく必要があります。

 

言い方によっては社長の機嫌を損ねる可能性もあるので難しいところではありますが、
申請後に欠格事由が判明して許可を受けられなくなったりしたら、もっと大変なことになります。
ですから、そこは上手く聞いてください。

 

 

 

では、仮に役員の中に犯罪歴等の欠格事由があった場合は
建設業許可申請を諦めなければいけないのでしょうか?

 

 

いえ、そんなことはありません。

 

 

欠格事由がある人を「役員」から外して申請したら良いのです。
それで許可を受けられます。

 

 

 

令和7年現在の環境:デジタル化による「逃げ場のなさ」

 

 

2025年(令和7年)現在、行政のデジタル化が進展し、各省庁間のデータ連携はかつてないほど迅速になっています。
一昔前のように「地方の軽微な違反だからバレないだろう」といった安易な予測は通用しません。

 

新人行政書士は、単に書類を右から左へ流すのではなく、「欠格要件という地雷を事前にすべて取り除く」安全管理のプロとしての自覚を持ってください。
少しでも疑義がある場合は、申請前に匿名で行政庁の窓口に「事前相談」を行う慎重さが、あなたとクライアントを守ります。

 

 

まとめ

 

 

欠格要件の確認は、建設業許可申請において最優先で行うべき作業です。

 

一つでも該当すれば許可は絶対に下りず、しかも申請手数料は返還されません。

 

対象者は申請者本人だけでなく、すべての役員、実質的支配者、令3条の使用人まで含まれます。

 

過去の刑事罰、破産歴、許可取り消し歴、反社会的勢力との関係など、デリケートな事項を漏れなく聞き出すための技術と慎重さが、プロの行政書士には求められます。

 

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