「十分な運転資金がないと怖くて開業できない」という行政書士試験合格者へ
最近、ある行政書士試験合格者から相談を受けました。
その方は、現在会社勤めをしている45歳の方。
行政書士試験に合格して、独立開業したいという気持ちを持っています。
でも、開業してすぐには仕事は入らないだろうから、60歳まで会社勤めをして十分な運転資金を貯めてから開業すべきか悩んでいます。
実は、似たような相談は毎年来ます。
私はこのサイトを立ち上げて約10年になりますが、
その間、この手の相談に何回お答えしたか、わかりません。
相談のメールを送ってこられた方だけでもそれだけいるということは、
実際にはもっと多くの方が同じような悩みを持っているのだろうと思われます。
そこで、この相談に対する回答を、今回記事にして公開しておこうと思います。
最初に結論を言います。
1年分の生活費と事務所維持費を貯めたらすぐに開業したほうが良い
というのが私の考えです。
長く見ても2年ですね。それ以上の期間にはしないほうが良いです。
具体的な金額についてはこちらを参照してください→「行政書士事務所開業に必要な費用」
相談された方は、できるだけ多くの開業資金を貯めて不安のない状況で開業したいというお気持ちなのだと思います。
しかし、開業資金をどれだけためても、お金の不安が消えることはありません。
例えば、1000万円貯めて開業すれば大丈夫かと言えば、全然大丈夫ではないです。
開業後、赤字経営が続けば、いつかその1000万円も溶けてなくなります。
3000万円でも同じ。
大切なことは、早く黒字にすること。そして、黒字経営を続けることです。
黒字を継続しない限り、事業が継続することはないのです。
だから、どれだけ開業資金があったとしても、大丈夫ではないのです。
なので、1年という期限を決めて(長くても2年)、
「その間に絶対に経営を黒字にする!」という覚悟をもって開業すべきです。
腹をくくって開業したほうが成功する可能性が高くなると思います。
1年で黒字にしようと思ったら、甘えも怠け心もなくなります。
自分が持っているすべてのリソースを営業にぶち込んで走り続けるはずです。
その勢いのまま1年間走り切って黒字にできたら、
2年目以降も同じスピードで走り続けることができると思います。
そうなったら勝ちですね。経営が軌道に乗ったということです。
体力が続く限り、事務所経営を続けることができるでしょう。
そもそも、本来事業とは、借金をしてスタートするものです。
飲食店、美容室、歯科医院、などなど、業種によって相場は違いますが、
数百万から数千万の借金を抱えて開業するのが通常のビジネスです。
しかし、行政書士は違います。
知識と一部屋さえあれば開業できます。
だから借金しなくてもいいのです。
こんなにリスクの少ないビジネスはなかなかありません。
それなのに、何年もかけて準備をするというのは、ビジネスの規模にあった計画とはいえません。
結局は、リスクを背負う覚悟があるかどうか、ということです。
その覚悟が持てないのであれば、独立開業なんてやめたほうが良いです。
それでは最後に、メール相談に対しての私の回答を公開します。
メール拝見しました。
お金の不安、ですよね。
この不安は誰しもが抱えています。
安定した生活がしたい、と考えるのが通常の人間です。
よくわかります。
しかし、独立開業したら、お金の不安が常につきまといます。
それは、新人行政書士でも、ベテランでも、同じです。
年商1000万円を超えても、翌年はどうなるかわかりません。
年商1億を超えても同じです。むしろ、売上の桁が上がって事務所の規模が大きくなれば、テナント料、人件費といった固定費の桁も上がります。そして、上がった固定費は必ず支払わなければならず、しかし、来月の売り上げは保証されていない。
この状態がずっと続くのが経営者です。
だから、行政書士に限らず、経営者は常にお金への不安とつきあいながら毎日闘っています。
むしろ、新人行政書士の方が、お金の不安は小さいですね。レンタルオフィスを借りても、その程度の固定費はバイトをしながらでも支払えますから。
でも、スタッフを数名抱えている行政書士はそうはいきません。成功すればするほど、お金の不安が大きくなるのが経営者なのです。
結局は、この不安とつきあいながらでもビジネスに挑戦したい、という気持ちがあるかどうかだと思います。
会社勤め、悪くないと思います。
もしかしたら、今の収入に満足されていないのかもしれませんが、それでも来月確実にもらえる給料があります。
その給料の範囲内で生活し、そこから老後のための貯蓄をしていけば、老後への不安を過度に抱えることはないでしょう。
だから、多くの人は会社勤めをするのです。
でも、ごく一部の人間が、自分の力でビジネスに挑戦したい、と思います。
その気持ちが抑えられなくなった人だけが独立開業するのです。
答えは、あなたの心の中にあります。
ご自身で答えを見つけてください。
そして、もし、開業するのであれば、60歳でスタートするよりも、45歳でスタートする方が圧倒的に有利です。
同世代の人間が社会の中心で働いている時期に開業したほうが、圧倒的に良い人脈を構築できるからです。
そして、人間の寿命には限りがあります。早くスタートした方が、チャンスに出会える機会が増えるのです。
なお、誤解のないように補足しておきます。
60歳では遅い、と言っているわけではありません。
ビジネスに挑戦するのであれば「今」スタートするのが一番いい、ということです。
誰にとっても、「今」が一番早い時なのですから。
私からのアドバイスは以上です。
開業に対する不安、怖さは誰にでもあります。
でも、それがあるからこそ、経営者は、現状に満足せずに努力を続けることができるのです。
逆に、あまり不安を感じないという経営者は、失敗することが多い。
一時的な成功の上にあぐらをかいて、努力しなくなりますからね。
⇒ホームページ作成マニュアル | ⇒ブログ作成マニュアル |
---|---|
⇒名刺作成マニュアル | ⇒職印作成の作法 |
---|---|
⇒書式 | ⇒実務講座 |
---|---|
関連ページ
- 「行政書士の平均年収」の根拠と意味
- 行政書士試験の受験、行政書士事務所の開業を考えている人は行政書士の平均収入・年収が気になります。しかし個人事業主である行政書士の収入はピンキリで「平均」という概念は目安になりません。成功したいのであれば地域でNO1を目指しましょう。
- 司法試験不合格後、就職先がなく行政書士になろうと考えているあなたへ
- 私は司法試験に不合格になり行政書士となりました。しかし現実は甘くなかったです。国家資格だからといって食える保証はなし。司法試験の受験勉強で身につけた法律の知識も役に立たない。行政書士事務所経営はゼロからのスタートだったのです。
- 定年後に行政書士としてシニア起業する諸先輩方へ。まだまだ輝けますよ!
- 人生経験、人脈、資金が豊富なシニア世代の方が本気になって行政書士事務所を経営すれば、若手よりも成長のスピードは速くなります。実際に定年後に行政書士になって成功している方はとても多いのです。
- 行政書士開業体験談(本、ブログ)を毒にするな!
- 学校教育でサラリーマン思考を植えつけられた人は「正解」を探します。 しかし、経営に「正解」はありません。 自分で作ったサービス・商品を市場に出す。市場の反応を見る。改善する。その繰り返しの中で「最適解」を見つけるしかないのです。
- 士業こそ返報性のルール(原理)を厳守せよ!
- 返報性の原理は人間社会を発展させたルール。ビジネスもこのルールに従って動いている。マーケティングはまずこのルールを利用することから始まる。独立した行政書士のような個人事業主は特にこのルールを厳守しなければ経営で失敗することになる。
- 「未経験で開業するのは不安・・・」←大半の行政書士は実務未経験で独立です
- 実務未経験でも全く問題はない。なぜなら「実務」には正解があるからそれを学ぶだけ。 一方「経営」に正解はない。自分で経験しながら経営のスキルを高めていくしかない。
- 稼ぐ行政書士になるために〜山を登ればライバルが勝手に減る話
- 目の前に困難な課題があれば必ずやり遂げる。そうするだけで勝手にライバルが減り、稼げる行政書士に成長できる。
- 【廃業する行政書士のパターン】やらない理由を探すノウハウコレクター
- いくらノウハウをかき集めても行動に移らなければ結果は出ない。他者に依存する体質では経営者として自立できない。行政書士になるのであればサラリーマン思考から脱却し、経営者のマインドを持ちましょう。
- ブラック企業のサラリーマンを辞めたいから行政書士になろうとしているあなたへ
- ブラック企業を辞めて行政書士になる人が失敗する理由。 開業後はサラリーマン時代以上に苦しい労働環境が待っている。 ダラダラするのも勝手だが、そんな奴は廃業する。 その現実を理解し、そこを乗り越える覚悟がなければその先の成功には辿り着けない。
- 行政書士の社会的評価を上げたい!報酬額の相場を上げたい!
- そもそも、行政書士の業務で解決できる悩みを抱えている人はどこにでも大量に存在します。 しかし、世間一般の人は行政書士が何をする専門家なのかを知らない。 だから、悩みを抱えても、行政書士を探し始める人はとても少ない。 つまり、現状では、行政書士は潜在的な需要を拾いきれていないのです。
- 「行政書士で独立しても3年は食えない」は本当か?→嘘です
- 新人行政書士が食っていけるようになるには「認知」を広げることが大前提。 そのために必要なのが「営業活動の量と質」 ネットでレバレッジをかければ「1年」で食えるレベルに到達することも十分に可能。 「3年くらいすれば食えるでしょ」などとのんきに構えている新人は消えゆくのみ。